東洋的トレーニングの時代
決定版 中国武術完全マスターブック (学研ムック)
今回の記事は本当に自分の趣味が前に出ているので、読んで納得できる人と全く納得できない人が出てくることが予想されます。特に科学とか理論が好きな人は避けたほうがいいと思います。かなり不合理な理屈ですので。
さて本論にいきます。いきなりですが、自分は身体運用の本を読んで実際に体を動かしてみるのが好きです。例えば、上にあるような中国武術の本、日本の古武術の本、ナンバに関しての本などです。
こうした身体運用の本は大雑把に言って「自分の体をいかに合理的に動かすか」、というテーマで書かれています。
そのための方法論として、いかに筋肉や骨を連動させて、操作するかという点に重点が置かれています。トレーニングも力の伝達とか、体の連動に関するものが多いです。そうした鍛錬の結果、最小限の力で動くことが可能になると説きます。
これは現在主流の西洋的な発想とは異なります。西洋的なトレーニングは基本的に科学的なエビデンス(根拠)をもとに、個別最適化を進めるという感じです。
下肢を鍛えて、上半身を鍛えて、体幹を鍛えて……と全身を鍛える。あるいは、筋力をつけて、敏捷性を鍛えて、調整力を鍛えて……、そうやって個々の能力を鍛えれば、全体としても最適になる。そういう理屈です。
つまり極論すれば、東洋武術(身体操作)では全体の連動、整合性に重きを置きますが、西洋的には個別の部分をよくすることを重視するというわけです。
どちらがいい、悪いというのは多分ありません。バランス、両立が最適解であると個人的には信じています。
ただ、現在のトレーニングはあまりに西洋的すぎるので、少し苦情を述べようと思います。
例えば、体幹を鍛えるというと、どういうトレーニングをするでしょうか。多分、大抵の人は、腹筋・背筋を強化すればいいと考えがちです。有名なのは、腹筋・背筋運動ですね。
しかし、それは東洋的な発想からいえば、正解ではないのです。なぜならそれは筋肉を鍛えているだけであって、動きを見ていないからです。
実際にどうやって体幹を使うかを考えたときに、武術的には骨盤、背骨、肋骨の連動が重要であると考えます。いかにこれらの動きを滑らかにつなげるかです。
そうした動きでは、背中が柔らかく動くこと、わき腹が伸びること、分割して体を意識できることが肝要です。だから、それを意識して体を動かす練習をする。これが、東洋的なトレーニングです。筋肉を固めることが目的ではありません。やわらかく、かつ連動する筋肉を要求するのです。
他にも、身体運用には面白いトレーニングがあります。一番顕著なのは、站椿功です。これは、武術にかかわったことがある人なら知っていると思いますが、立つだけのトレーニングです。
具体的にやってみたい人は、下のホームページが参考になります。
基本功その3・歩型
私の習った站椿功
立つだけですが、要求はいくつかあります。最小限の力で立つこと、丹田を意識することなどです。5分くらいやってみればわかりますが、力を抜くのはほぼ不可能に思えます。むしろすぐに足がつります。
しかし、実際には達人の方は何分でも立てるそうです。これは多分、体の使い方が合理的だからだと思います。正確に言えば、体の内部の筋肉で立てるそうです。
バドミントンに関係ないと感じるかもしれませんが、正しく構えられるというのはフットワークの大前提です。いかに最低限の力で立つか、いかに動ける状態を維持するかという課題は同じです。
科学的に言えば、ウェイトトレーニングで下肢を鍛えて、強く蹴りだせばいいじゃないかということになりますが、それは個人的には人間の力を軽視しているように感じます。まあ、最終的にはそういう世界になるでしょうが。
ここまでつらつら述べてきましたが、結局のところもっとバドミントンのトレーニングも動きももう少し東洋の知恵を生かせるのでは、と自分は思うのです。
呼吸法、丹田、脱力、骨盤操作、膝抜き……いろいろな知恵が武術にあります。そして、それは決して偽物ではなくて、確かに存在する実体です。確かに感覚的な世界で、西洋のトレーニングみたいに万人受けは目指せないけれども、そういう手法が存在するということを知ってほしいと思います。
ここからは、具体的にどういう方法があるのか知りたいという方のために、おすすめのメソッドと書籍を紹介します。
1.ヨガ
ヨガのいいところは、いろいろな部分の柔軟性(特に背中)とバランス感覚を養えるところです。よくあるストレッチと違い、動きながら行うので非常に使える筋肉を作れます。
ウォーミングアップにも使えますし、便利です。最近ではアスリートヨガという選手向けのものも開発されているそうです。ヨガは非常に容易で効果が高いので、万人受けしやすい気がします。ストレッチで物足りない人も使えますしね。
自分が使っているのは下記のテキストです。簡単なので2週間あれば、すべての動きができそうです。ただ、本気のアスリートが使うには、少し物足りないでしょうね。そういう方にはもう1段上のレベルのものを勧めておきます。
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2.身体意識を鍛える。
これは個人的には好きなトレーニングですが、万人受けはしません。中心軸や丹田を実際に、意図的に作ろうというトレーニングです。高岡先生は信頼できる人なので、効果は保証します。
しかし、ヨガとは違い、西洋的なトレーニングとはほぼ真逆に位置する考え方なので、科学を信奉する人は多分受け付けません。今回の記事をスラスラ読めた人ならいけるかも……。
3.胴体力
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この本では、骨盤・体幹操作を3つに分類して鍛えようとするものです。ベースはヨガと武術で、柔軟性向上にも役に立つだろうと思います。ただどちらかというと、動きの連動に力を入れています。
体幹と下肢の連動、動きやすい立ち方、あとは体の分化について書かれています。練習すれば、多分誰でも身につくように説明がされていますが、多分3つの中で1番難しいです。本当に体の操作に興味があれば、間違いなく役に立つと思いますが、しっかり体で感じないと意味がないという点でハードルが高いです。
あとは、ナンバの動きを研究している木寺さん、小田さんあたりの書籍もとっつきやすいです。下の小田さんの文章(けっこう長いですが)を読んで関心があれば、書籍にも手を伸ばしてみるといいかもしれません。
二軸動作「常歩(なみあし)」入門 (pdf注意)
非常に長くなりましたが、科学的、西洋的なトレーニングだけが正しいわけじゃない、別の発想もあるということを知ってもらえたら幸いです。
ここまでお付き合いしていただき、ありがとうございました。
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